小児におけるインフルエンザワクチンの効果:コクランシステマティックレビュー

小児に対するインフルエンザワクチンの効果。実際にあるかどうかを確認した2018年のコクランレビュー。

■ インフルエンザワクチンの効果に関して、最近の報告をご紹介してきました。

■ 例えば、本邦における、小児に対するインフルエンザワクチンの効果に関する報告や、、

■ 小児の入院率を減らすという報告や、、

■ さらに、死亡率を減らすといった報告などです。

 

Jefferson et al. Vaccines for preventing influenza in healthy children. Cochrane Database Syst Rev 2018; 2:Cd004879.[Epub ahead of print]

16歳未満のインフルエンザに関するインフルエンザワクチンのランダム化比較試験に対し、メタアナリシスを実施した。

背景

■ 小児や成人のインフルエンザの影響は、主に学校や職場の長期欠席/欠勤である。

■ しかし、合併症のリスクは、小児および65歳以上で最も大きい。これは、2011年に公開されたレビューを更新した最新版である。

■ このレビューは、今後、新しい試験またはワクチンが入手可能になった場合にのみ更新される。

■ 以前のバージョンのレビューに含まれている観察的なデータは、背景的な理由から保持されたが、レビューの結論に影響がなかったために更新されていない。

 

目的

■ 健康な小児のインフルエンザワクチンの影響(有効性、害)を評価する。

 

検索方法

■ Cochrane Acute Respiratory Infections Specialization Register、MEDLINE(2016年12月19日〜31日)、Embase(1976年12月31日〜2016年12月31日)、Cochrane Acute Respiratory Infections Specialized Register 、WHO国際臨床試験登録プラットフォーム(ICTRP; 2017年7月1日)、ClinicalTrials.gov(2017年7月1日)を含むCochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(Cochrane Library 2016号12号)。

 

選択基準

16歳未満の健康な小児に自然発症したインフルエンザにおいて、インフルエンザワクチンとプラセボ/非介入と比較するランダム化比較試験

■ このレビューの以前のバージョンには、コホート研究19試験と、症例対照研究11試験が含まれていた。

■ 私たちはこれらの研究デザインの検索は更新せず、背景的な目的のために観察研究を保持した。

 

データ収集と分析

■ バイアスリスクを個別に評価し、データを抽出した。

インフルエンザ、インフルエンザ様疾患(influenza-like illness; ILI)、合併症(入院、耳の感染症)、有害事象のアウトカムに関し評価するためにGRADEを使用した。

■ インフルエンザおよびILIの対照群のリスク変動のため、絶対的な影響が、対照群のリスクの中央値として報告され、それに応じたワクチン接種に必要な人数(numbers needed to vaccinate ;NNV)が検討された。

■ その他のアウトカムについては、対照群リスクが使用された。

 

主な結果

41の臨床試験(> 200,000人の小児)が含まれた

■ 研究の大部分は2歳以上の小児で実施され、生弱毒化ワクチン/不活化ワクチンを、プラセボ/ワクチン未接種とを比較した。

■ 調査は、1984年から2013年の間に、米国、西ヨーロッパ、ロシア、バングラデシュにおける単回のインフルエンザシーズンで実施された。

■ バイアスリスクが低い研究に解析を制限し、バイアスの影響が無視できる唯一アウトカムがインフルエンザと中耳炎だった。

■ 研究デザインと報告の多様性のため、有害事象のメタアナリシスは不十分だった。

 

弱毒化生ワクチン

弱毒化生インフルエンザワクチンは、プラセボ群/ワクチン未接種群と比較して、3〜16歳の小児のインフルエンザ感染リスクを18%から4%に低下させ(risk ratio [RR] 0.22, 95% confidence interval (CI) 0.11 to 0.41; 7718人の小児; 中等度のエビデンス)インフルエンザ様疾患(ILI)を17%から12%に減らす(RR 0.69、95%CI 0.60~0.80; 124,606人の小児 ;低いエビデンス)可能性がある。

インフルエンザの1例を予防するためには7人が予防接種を受ける必要があり、1人の小児のILIを経験するのを防ぐために20人の子供が予防接種を受ける必要がある。

■ 季節性インフルエンザの際の急性中耳炎は、ワクチンとプラセボではおそらく変わらないが、この結果は急性中耳炎率が特に高率で認めた単一の研究によるものである(RR 0.98,95%CI 0.95〜1.01;中程度のエビデンス)。

■ 学校欠席に対するワクチンの効果を判定するために利用できる情報は、単一の研究からの非常に低い質のエビデンスからであり、不十分だった。

■ 小児が予防接種することが、親の欠勤を減らすかもしれないという不十分なデータがあるが、信頼区間(CI)は1をまたいでいた(RR 0.69,95%CI 0.46〜1.03;低いエビデンス)。

■ 入院につながるという、インフルエンザ合併症の最も重篤な結果に関するデータは入手できなかった。

■ ワクチン接種後の発熱を評価した4研究において、生ワクチンを接種した小児の発熱0.16%から15%まで幅広く、プラセボ群でも0.71%〜22%だった(非常に低いエビデンス)。
嘔気に関するデータは、報告されなかった。

 

不活化ワクチン

不活化ワクチンは、プラセボまたはワクチン接種なしと比較して、2〜16歳におけるインフルエンザのリスクを30%から11%に低下させ(RR 0.36,95%CI 0.28〜0.48; 1628人;高いエビデンス)ILIを28%から20%に低下させる可能性がある(RR 0.72、95%CI 0.65~0.79; 19,044人;中等度のエビデンス)

インフルエンザ1例を予防するために5人が予防接種を受ける必要があり、ILIの1例を防ぐために12人が予防接種を受ける必要がある。

■ 信頼区間(CI)はワクチン接種後の中耳炎の有意な増加を除外しないが(RR 1.15,95%CI 0.95〜1.40; 884人;中程度のエビデンス)、中耳炎のリスクは予防接種群とワクチン非接種群で同程度だった(31%対27%)。

■ 単一の研究からの非常に低いエビデンスのため、学校の欠席に対するワクチン効果を判定するには情報が不十分だった。

■ 両親の仕事、入院、発熱、嘔気に関するデータは確認しなかった。

■ 二次症例、下気道疾患の治療必要性、薬物処方に関し、限られたエビデンスを見出した。

■ 1価パンデミックワクチンのひとつは、小児の強い感情(カタレプシー)・睡眠障害(ナルコレプシー)の体験によって誘発された突然の筋緊張低下と関連した。

■ 深刻な害(例えば、発熱発作)のエビデンスは乏しかった。

 

結論

3歳~16歳の小児において、生弱毒インフルエンザワクチンは、おそらくインフルエンザを減らし(中程度のエビデンス)、ILIを減らす可能性(低いエビデンス)がある

3歳~16歳の小児において、不活性化ワクチンはインフルエンザを減らし(高いエビデンス)、ILIを減らす可能性(低いエビデンス)がある。

■ 両方のワクチンのタイプについて、インフルエンザやILIの絶対的減少は研究集団でかなり異なった。

■ これらの所見が異なるセッティングでどのように言い換えられるかを予測することは困難であった。

■ 2歳未満の小児に対するランダム化比較試験をほとんど見つけることができなかった。

■ 有害事象のデータは、利用可能な研究では、十分に述べられていなかった。有害事象の定義、確認方法、報告に対し、標準化されたアプローチが必要である。潜在的な有害性の全体的なケースの同定は、このレビューの検討の範囲外である。

 

 

結局、何がわかった?

 ✅ 弱毒化生インフルエンザワクチンは、プラセボ群/ワクチン未接種群と比較して、3〜16歳の小児のインフルエンザ感染リスクを18%から4%に低下させ、インフルエンザ様疾患(ILI)を17%から12%に減らす可能性がある。

 ✅ インフルエンザの1例を予防するためには7人が予防接種を受ける必要があり、1人の小児のILIを経験するのを防ぐために20人の子供が予防接種を受ける必要がある

 ✅ 不活化ワクチンは、プラセボまたはワクチン接種なしと比較して、2〜16歳におけるインフルエンザのリスクを30%から11%に低下させ、インフルエンザ様疾患( ILI)を28%から20%に低下させる可能性がある。

 ✅ インフルエンザ1例を予防するために5人が予防接種を受ける必要があり、ILIの1例を防ぐために12人が予防接種を受ける必要がある。

 

 

インフルエンザに対する生ワクチンと不活化ワクチンの有効性はあり、不活化ワクチンがより有効性は高い。

■ 一時注目された生ワクチンは、本邦では使用されていません。最近、生ワクチンの効果がやや疑問視されており、メタアナリシスでも不活化ワクチンより効果が低いと言えそうです。

■ なお、乳児期のインフルエンザワクチンの効果に関しては、最近ランダム化比較試験が実施され、有効性が実証されています。

■ とはいえ、発症予防という観点での有効性は期待値に達していないのかもしれません。一方で、上に挙げたように、重篤化を防ぐ可能性は十分にあるといえるのではないでしょうか。

 

 

今日のまとめ!

 ✅ 3歳~16歳の小児において、生弱毒インフルエンザワクチンは、おそらくインフルエンザを減らし、インフルエンザ様疾患を減らす可能性がある。

 ✅ 3歳~16歳の小児において、不活性化ワクチンはインフルエンザを減らし、インフルエンザ様疾患を減らす可能性がある。

 

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