Nurmatov U, et al. Allergen immunotherapy for IgE‐mediated food allergy: a systematic review and meta‐analysis. Allergy 2017; 72:1133-47.
食物免疫療法は、食物アレルギー治療の切り札として研究がすすめられています。
■ 食物アレルギーの標準療法は、「必要最小限の除去食」です。
■ 一方で、食べられる量を食べつづけることによって増量を目指す「食物経口免疫療法」が注目されています。
【部分訳】食物経口免疫療法総論(第1回/全4回):イントロダクション
■ さらに、皮膚に特別なパッチを貼ることで、安全に摂取できる量を増やす「経皮免疫療法」も実用化を目指し、研究が進められています。
アレルゲン免疫療法に関し有効性・安全性・コストを確認したランダム化比較試験(RCT)25件と非ランダム化試験(NRS)6件を含む31件(計1259人)を評価した。
背景
■ 欧州アレルギー臨床免疫学会(European Academy of Allergy and Clinical Immunology;EAACI)は、アレルゲン免疫療法(Allergen Immunotherapy;AIT)のIgE依存性食物アレルギーのガイドラインを策定している。
■ 臨床上の推奨事項の進展を周知するために、我々は食物アレルギー管理におけるAITの有効性、安全性、コスト/有効性に関するエビデンスを批判的に評価しようとした。
方法
■ 無作為比較試験(randomized controlled trials; RCTs)と非ランダム化試験(nonrandomized studies; NRS)に関し、9種類の国際電子データベースを検索し、システマティックレビューとメタアナリシスに着手した。
■ 適格性のある研究は、2人の査読者によって予め定義された適格基準を用いて独立して評価された。
■ 研究の質は、RCTのためのBiasツールのCochrane Riskツールと準RCTのためのCochrane ACROBAT-NRSツールを使用して評価された。
■ 事前に予定されたサブグループと感度分析を用いて、ランダム効果メタアナリシスを行った。
結果
■ 1814件の潜在的に関連性のある論文を特定し、ランダム化比較試験(RCT)25件と非ランダム化試験(NRS)6件を含む31件(計1259人)の適格性のある試験を選択した。
■ 25試験は経口免疫療法(oral immunotherapy; OIT)、5試験は舌下免疫療法(sublingual immunotherapy;SLIT)、1試験は皮膚免疫療法(epicutaneous immunotherapy;EPIT)を評価し、研究の大半は小児が対象だった。
■ 27研究では脱感作が評価され、8研究ではアレルゲン免疫療法(AIT)の中断後の持続的な無反応性(sustained unresponsiveness;SU)が検討された。
■ メタアナリシスにより、脱感作(リスク比(RR)= 0.16,95%CI 0.10~0.26)に関して実質的な有益性を示したが、持続性不応答(SU)は確認できなかった(RR = 0.29,95%CI 0.08~1.13)。
論文から引用。経口免疫療法(OIT)または舌下免疫療法(SLIT)vs 対照(ランダム効果モデル)による脱感作のリスク比。
■ 疾患特異的QOL(Quality of Life)に関する研究が1件のみ報告されているが、OITと対照群の比較結果は報告されなかった。
■ メタアナリシスにより、全身性有害反応を経験するリスクは、AITを受ける患者の方が高く、局所的な副作用のリスクはさらに顕著に高くなった。
論文から引用。OIT/SLIT中の全身反応のリスク。
論文から引用。OIT/SLIT中の局所反応のリスク。
■ バイアスリスクが高いと判断された研究を除く感度分析は、食物アレルギーのAITの有効性・安全性の大まかな推定が堅牢であることを示した。
■ どの研究でも、健康に関する経済分析に関するデータは報告されていなかった。
結論
■ アレルゲン免疫療法(AIT)は、AITの感受性(すなわち脱感作)および中止後のIgE依存性食物アレルギーのある児の食物に対する反応閾値を高めるのに有効であり得る。
■ しかし、重篤な全身性有害反応のリスクが軽度上昇し、局所的副作用が大幅に増加することにも関連している。
■ AITの、成人・長期的効果・QoLへの影響、費用対効果に関して、より多くのデータが必要とされている。
結局、何がわかった?
✅アレルゲン免疫療法は、脱感作する可能性が0.16倍になる(改善する)が、持続性不応答(SU)に至るかどうかは確認できなかった。
✅アレルゲン免疫療法は、全身性有害反応を経験するリスクが高く、局所的な副作用のリスクはさらに顕著に高い。
標準療法とはいえないが、食物免疫療法は有望な治療方法のひとつ。
■ 食物アレルゲン免疫療法は、中止すると多くは再燃することが示されています。
卵経口免疫療法(OIT)を3か月中止すると、どれくらい再燃するか?
■ ただし、リスクは厳然として存在し、このメタアナリシスでもそれが示されたといえましょう。
■ なお、食物アレルギーにおける脱感作とは、食べ続けていれば継続して摂取可能な状況を示し、持続性不応答(SU)は、研究目的で一時免疫療法を中断し再燃するかどうかを調べ、再燃しないという状態を示します。
今日のまとめ!
✅アレルゲン免疫療法は、脱感作に至らないリスクを0.16倍にするが、全身的・局所的副反応のリスクはあげる。