Baked milk(焼き固めた牛乳)は、乳アレルギーを改善させるかもしれない

Baked milk(焼き固めたミルク)による経口免疫療法は有効か?をテーマとしたランダム化比較試験をご紹介します。

Baked milkとは、マフィンなどの「強く加熱した牛乳」のことです。

■ 私は、最初からBaked milkで免疫寛容を誘導するのを期待して(治療として)摂取していただくことは積極的にはしていません。というのは、どちらかというと否定的な報告も多く、結論も出しにくいからです。もちろん、「必要最小限の除去」として摂取できるお子さんに関して除去したりはしませんし、乳がある程度摂取できるようになったら、食パンなどから解除して日常生活の改善を図ることは積極的に行います。

■ 栄養の代替食として低アレルゲンミルクなしでBaked milkで治療を始めたとしても量はきわめて少なくなるため、成長や骨密度の問題は解決できないという問題点もあります。

■ しかし、低アレルゲンミルクや牛乳は、それまで除去していた患者さんにとって、「味の面で」なかなか摂取しにくいものです。ですのでBaked milkは魅力的でしょう。そこで最近、Baked milkを用いた経口免疫療法の報告がありましたのでご紹介いたします。

 

Esmaeilzadeh H, et al. The Effect of Baked milk on Accelerating Unheated Cow's Milk Tolerance: A Control Randomized Clinical Trial. Pediatr Allergy Immunol 2018. [Epub ahead of print]

牛乳アレルギーがあると診断された生後6ヶ月~3歳の84人に関し、マフィンで摂取できることを確認のうえで、マフィン摂取群・完全除去群にランダム化し、1年後の寛解を比較した。

背景

■ 牛乳アレルギー患者の食生活にBaked milk製品を足すことによる耐性の促進効果があるかを評価する。

 

方法

牛乳にアレルギーがあると診断された84人(生後6ヶ月〜3歳)を対象にランダム化比較試験を行い、経口食物負荷試験(oral food challenge; OFC)においてマフィンの調理形態で摂取した牛乳に耐性があることを確認した。

■ 参加者は、年齢および性別にマッチした介入群および対照群にランダム化された。

■ 介入群は、マフィンの調理形態の牛乳を6ヶ月間摂取し、その後ピザの料理形態で焼いたチーズをさらに6ヶ月間摂取するよう指示された。

対照群は、乳製品を1年間厳密に除去するように指示された。

■ 乳、カゼイン、βラクトグロブリンの皮膚プリックテスト(Skin prick test;SPT)および血清特異的IgE(sIgE)抗体価(ImmunoCAP)を試験の前後で測定した。

■ さらに、試験中にBaked milk製品を許容した群と全対照群は、試験終了時に非加熱乳に耐性があるかを評価するためにOFCを受けた。

 

結果

1年間の研究期間の終わりまでに、マフィン摂取群88.1%(42人中37人)および対照群の患者の66.7%(42人中28人)が非加熱ミルクに対する耐性を獲得したことが示された(p値=0.018)

■ 乳特異的SPTやsIgE抗体価は、介入群において有意な減少を示した。

■ 症例群および対照群で、初期のsIgEレベルは熱していない乳耐性を予測しなかった。

 

結論

■ 乳アレルギー患者の食生活にBaked milk製品を導入することで、これらの患者における非加熱ミルクの耐性が促進される。

■ ミルク、カゼイン、β ラクトグロブリンに対する特異的IgE抗体価は、加熱されていない乳の耐性を予測しなかった。

 

結局、何がわかった?

 ✅6ヶ月~3歳のマフィン摂取可能な牛乳アレルギー児において、マフィンを1年間摂取すると88.1%、完全除去1年間では66.7%が非加熱ミルクを摂取できるようになり、有意差が示された(p=0.018)。

 

 

Baked milkが経口免疫療法に使えるという報告ではあるものの、少し気をつけて読むべき報告と思います。

■ この研究で気をつけなければならないのは、研究への参加群は「すでにマフィンが食べられる群である」ということで、しかも介入群は年齢が低いということです。

■ すなわち、対照群(完全除去群)も66.7%も摂取可能になっています。これは、重症な群ではないということを示しています。そのような群に対し、しかもマフィンなども食べられるというのに完全除去を勧めていいのかどうかは、難しいといえるかもしれません。すなわち、低アレルゲンミルクを摂取させるだけでも、寛解を促進できるような群と思われるからです。

■ 生乳で失敗したような重症な群に関しては、Baked milkでおこなっても治療効果がのぞめなかったという報告は上でご紹介しました。ですので、重症な患者さんにBaked milkから免疫療法を行うのは、難しいと考えています。

■ しかし、牛乳を除去して年齢が高くなった児に対し、低アレルゲンミルクを飲んでいただくのは困難があることも確かです。「Baked milkしか摂取できない」場合は、すこし効果を期待できるかもしれない、、そのように受け止めるような結果のように思いました。

 

今日のまとめ!

 ✅Baked milkは、完全除去よりも免疫寛容を誘導する可能性がある。ただ、臨床応用には注意が必要と思われる。

 

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