
デュピクセント(デュピルマブ)は重症アトピー性皮膚炎治療に用いられますが、喘息にも有効性が報告されるようになってきています。その喘息に対する効果を検討した大規模ランダム化比較試験をご紹介します。
■ 「デュピクセント」とは、新しい機序で重症アトピー性皮膚炎に効果のある、「生物学的製剤」のひとつ。生物学的製剤に関しては、以前3回シリーズでご紹介しました。おそらく、この種の薬剤は、多種多様な分野に拡大していくと思われます。
■ そして、デュピクセントは喘息にも有効性が示唆されており、いくつかのランダム化比較試験が報告されています。
Castro M, et al. Dupilumab Efficacy and Safety in Moderate-to-Severe Uncontrolled Asthma. N Engl J Med 2018; 378:2486-96.
12歳以上のコントロール不良の1902人をデュピクセント200mg群、300mg群、マッチされたプラセボ群にランダム化し、52週間観察して重症喘息の発生率を調査した。
背景
■ デュピルマブは、インターロイキン-4およびインターロイキン-13のシグナル伝達を両方阻止する完全ヒト抗インターロイキン-4受容体αモノクローナル抗体である。
■ そこで、コントロール不良の喘息患者に対するデュピルマブの有効性と安全性を評価した。
方法
■ 12歳以上のコントロール不良の1902人を2:2:1:1の比率でランダム化し、デュピルマブ200mg群もしくは300mg群、マッチしたプラセボ群に対し2週間ごと皮下投与を52週間実施した。
■ プライマリエンドポイントは、試験集団全体における、試験開始から12週までの気管支拡張剤使用前の強制呼気1秒量(FEV1)の変化、喘息の年間増悪率だった。
■ セカンダリエンドポイントには、好酸球数が300/mm3以上の患者における増悪率やFEV1が含まれた。
■ 喘息コントロールおよびデュピルマブの安全性も評価した。
結果
■ 年間の重症の喘息増悪率は、デュピリルマブ200mg2週間ごと投与群が0.46(95%信頼区間[CI]、0.39〜0.53)、マッチされたプラセボ群は0.87(95%CI、0.72〜1.05)であり、プラセボ群よりもデュピルマブ群で47.7%低かった(P <0.001)。
■ デュピルマブ300mg2週間ごと群でも同様の結果が見られた。
■ 12週間のFEV1は、デュピルマブ低用量群は0.32L増加した( マッチされたプラセボ群との差は 0.14L; P <0.001)。
■ より高用量でも同様の結果が見られた。
■ 血中好酸球数が300個/mm3以上の患者では、低用量のデユピルマブ群で年間の重症喘息増悪率が0.37(95%CI 0.29-0.48)、マッチされたプラセボ群で1.08(95%CI 0.85-1.38 )であり、プラセボ群より65.8%低かった( 95%CI、52.0〜75.6)。
■ 高用量でも同様の結果が観察された。
■ 血中好酸球増多は、プラセボ群4人(0.6%)と比較しデュピルマブ群52人(4.1%)で介入後に発症した。
結論
■ この試験では、デュピルマブを投与された患者は、プラセボを受けた患者よりも、より良好な肺機能や喘息コントロールだけでなく、重症喘息の増悪率も低下した。
■ 試験開始時の好酸球数がより高い患者でより大きな利益をみとめた。
■ 一部の患者には、好酸球増加が認められた。
■ (Funded by Sanofi and Regeneron Pharmaceuticals; LIBERTY ASTHMA QUEST ClinicalTrials.gov number, NCT02414854.)
結局、何がわかった?
12歳以上のコントロール不良の喘息患者において、
✅デュピリルマブ200mg2週間ごとの使用で、重症の喘息増悪率は0.46倍(95%信頼区間[CI]、0.39〜0.53)になり47.7%低下した(P <0.001)。
✅血中好酸球数300個/mm3以上群のほうが有効性が高かった。
デュピクセントは重症アトピー性皮膚炎だけでなく、気管支喘息にも有効。ただし注意喚起や副作用にも注意をはらう必要性があります。
■ デュピルマブ(デュピクセント)は、2018年5月に重症アトピー性皮膚炎に適応がおりました。高価な薬剤ですが、重要な地位になっていくと考えられます。
■ そして、今回の検討から、デュピクセントは、重症喘息に対しても有効性があり、重症アトピー性皮膚炎・重症喘息ともにある場合は有用性が高いといえそうです。
■ 現在あるアトピー性皮膚炎に対する生物学的製剤は、現状デュピクセントが先頭を走っているといえましょう。
■ もともと、重症アトピー性皮膚炎に使用されると喘息が軽くなることは予想されており、注意喚起が行われています。
【添付文書記載事項】
重要な基本的注意:
2. 本剤の投与によって喘息等の合併する他のアレルギー性疾患の症状が変化する可能性があり、当該アレルギー性疾患に対する適切な治療を怠った場合、喘息等の症状が急激に悪化し、死亡に至るおそれもある。本剤投与中止後の疾患管理も含めて、本剤投与中から、合併するアレルギー性疾患の主治医と適切に連携すること。患者に対して、医師の指示なく、それらの疾患に対する治療内容を変更しないよう指導すること。
■ さらに、結膜炎を中心とした副作用も報告されていますので注意を要します。
■ ヌーカラやゾレアといった、既に重症喘息に有効性のある生物学的製剤もあり、今後使い分けが問題になってくると考えられます。
今日のまとめ!
✅デュピルマブは、アトピー性皮膚炎だけでなく喘息にも有効性があり、年間の重篤な喘息発作を0.46倍にし、さらに好酸球数が多い群により有効だった。