baked milkによる免疫療法は、生乳による免疫療法とリスクも効果も変わらない

Amat F, et al. Is a slow‐progression baked milk protocol of oral immunotherapy always a safe option for children with cow’s milk allergy? A randomized controlled trial. Clinical & Experimental Allergy 2017.47:1491-1496

 baked milk(焼き固めたミルク)による免疫療法に関する研究。

■ あまり積極的にしていなかったTwitterを、最近少し積極的に発言するようになりました。するとフォロワーの方がずいぶん増え(多い方に比較するとまだまだ少ないのでしょうけど)、励ましのコメントなどをいただくようになりました。ありがとうございます。

■ さて、今回は、baked milkによる免疫療法の報告です。

■ baked milkは、一般にアレルゲン性を下げ、免疫療法の安全性を上げると言われていますが、経験上、それらの点に疑問を持っていました。そんな中、米国において牛乳アレルギー患児が負荷試験で亡くなったというニュースがありました。詳細は、わたくしが良く拝見している岡本先生のブログをご覧ください。

■ たいへん痛ましい事故と思います。特に牛乳に関しては、調布市でチーズの誤食で亡くなったという事故もあり、特に気をつける食材と思います。

 

PECO
P: 持続性のIgE-ミルクアレルギー(CMA)の診断を受けた3歳以上の児41人(平均年齢6歳)
E: baked milk群(低リスク群) 15日毎に25-30%増量 23人
C: 生乳群(高リスク群)5週間ごとに増量 18人
O: 介入の有効性 最小フォローアップ期間 5か月(高リスク群)から9ヵ月(低リスク群)後の自宅における毎日の摂取量

 

 

 負荷試験で閾値を決めた後、baked milk群と生乳群にランダム化し、それぞれの方法を設定して増量を目指した。

方法

■ 持続性IgE-CMAの診断は、血清カゼイン特異的IgEレベル≧0.35 kU / Lと、20分毎に増量し累積投与量5400mgの牛乳蛋白(MP)(ハーフスキムミルク牛乳160mL、最終単回投与量 MP2720mg相当)を投与する二重盲検プラセボ対照経口食物摂取(DBPCFC)により確認された。

■ DBPCFCにより累積投与量5400mgで反応が出現しなかった児は、自然耐性であると考えられ、除外された。

■ コントロール困難な喘息、急性感染症、プラセボに反応した児、親の同意がない(プロトコルを理解出来ないまたは理解困難)児も除外された。

■ DBPCFCの累積摂取量の1 / 10に相当する1回量を継続した後、baked milk群(低リスク群)と 生乳群(高リスク群)にランダム化された。

■ 低リスク群では、家庭で15日ごとに摂取量を増やすように指示された。投与量は、各段階でMP相当量を25%~30%増量され、摂取量を固定して処方された。

■ 調製食物に含まれるミルクの加熱時間は徐々に短くされ、MP 210mgが許容された場合、baked milkから半加熱されたbaked milkへ切り替えられ、さらに、MP 1970mg相当が許容された場合、半加熱されたbaked milkから生乳に変更された。

■ 毎日摂取する量を、1日あたりMP 2720mgの維持用量まで増量された。この最大摂取量に達するまでのスケジュールは約9ヶ月と推定された。

■ 高リスク群は、生乳ですみやかに開始するレジメンが採用された。このスケジュールはAR (adverse reaction;副反応)率が高いと考えられたため、医師の監督のもとで投与が行われた。

■ 急速経口免疫療法スケジュールを用いた他の施設の報告に基づき、増量間隔は5週間とされた。医師の監督下の投与の増量による最大の用量を毎日家庭で摂取した。

■ MP2720 mgに到達する予定のスケジュールは、約5カ月と推定された。

 

結果

平均フォローアップ期間は18[10-18]ヶ月だった。

■ 結果として、15人(36.6%)は耐性、11人(26.8%)は、平均697mg[27.2-2550]の耐性閾値の上昇で部分耐性、15人(36.6%)は耐性上昇なしとされた。

耐性率に関して、両群間に差は見られなかった(P = .18)

血清カゼイン特異的IgEは12.4から16.2kU/Lまでであり変化はなかったが、カゼイン特異的IgG4は2.93[1.23-10.9]から5.83[1.84-17.35]まで有意に上昇した(P < .01)。

全体的なAR (adverse reaction;副反応)数やARがあった小児のAstierスコアに関し、群間の有意差はなかった(両方ともP = .43)

 

結局、何がわかった?

 ✅平均18ヶ月の投与期間免疫療法を実施し、baked milk群と生乳群での耐性化率に有意差は認められなかった(P=0.18)。

 ✅36.6%は閾値の上昇が認められなかった。

 ✅副反応数や副反応の重篤度にも、有意差はなかった。

 

 

 baked milkによる免疫療法への過度な期待は禁物。

■ 一般に、IgE依存性の即時型牛乳アレルギーの自然経過は好ましいと考えられています。しかし、最近のCMAの経過に関する報告では、3歳以降に回復するチャンスは以前より低くなっている可能性が指摘されています(J Allergy Clin Immunol. 2013;131:805-812.)。

■ 加熱するとエピトープの構造が変化しアレルゲン性を低下させることが知られています。特に卵に関しては有名です。

■ そこで、baked milkを使用することが乳OITの安全性を改善すると考えられていました(Curr Opin Allergy Clin Immunol. 2009;9:234-237.)。しかし、この研究結果からは、baked milkだからと安心は全くできないといえましょう。

■ ただし、本研究に参加したCMA児が比較的重篤であったため、すべての小児まで解釈を拡大できないこと、2群間のスケジュールに差があったため、単純な比較が難しかったとされています。

■ とはいえ、重篤な有害事象のリスクは、baked milkを使用したOITでも、明らかであると結論されています。

■ また、以前、一般的な免疫療法でうまく行かなった群では、baked milkによる免疫療法の効果も低いことをご紹介いたしました。

■ さらに、システマティックレビューでも、bakedした食品でも、決して免疫療法が簡単ではないことが報告されていることもご紹介いたしました。

■ 今後、オマリズマブ(ゾレア)の併用が期待されていますが、副反応は減らすものの免疫療法の有効率には差がないのではないかとされています。

■ しかし、その保護効果は中止すると失われるという結果も報告されています。

■ 一方で、ピーナッツではオマリズマブの有効性が報告されていますので、やはり乳が難しい相手であるという印象が拭えません。

■ やはり、牛乳に関しての免疫療法に関しては、さらに研究をすすめていき、安全性を上げていく必要性があり、それが急務と言えましょう。

 

今日のまとめ!

 ✅重篤な乳アレルギーに対しては、baked milkでも生乳と同様に、免疫療法は決して簡単ではなく、重篤な症状を起こす可能性がある。

 

スポンサーリンク