食物アレルギーに対する免疫療法のレビューの一部の紹介。

Berings M, et al. Advances and Highlights in Allergen Immunotherapy: On the way to sustained clinical and immunologic tolerance. Journal of Allergy and Clinical Immunology 2017; 140:1250-1267.

 免疫療法に対する優れたレビュー。そのなかで食物アレルギーのパートのみ紹介。

■ Journal of Allergy and Clinical Immunology(JACI;米国免疫アレルギー学会雑誌)は、我々アレルギー学を志す者にとっての憧れのトップジャーナルです。JACIで発表されたレビューは、一切手を抜いていない優れたものが多く、読み応えがあります。

■ 今月のJACIに免疫療法のレビューもとても素晴らしく、まずは自分自身が興味のある食物アレルギー免疫療法のパートから読みました。ただ、このレビューはまだオープンアクセスにはなっていませんので、Abstractと、引用された研究結果の表のみご紹介いたします。

■ この表にある論文の中で、まだブログに取り上げていなかったものがあったので、今週追加してコンプリートしました。そこで、ブログ内での引用をしておくこととします。

 

 アレルゲン免疫療法の現在の評価と問題。

Abstract

■ アレルゲン免疫療法(AIT)は、アレルギー疾患の有効な治療戦略であり、100年以上にわたって使用されてきた。

■ しかし、近年、概念・実施方法・統計的評価・報告に対する期待が大きく高まっている。

■ 最適な投与量にするために、成人と小児において用量反応および確認試験、すなわち、皮下や舌下経路を使用したAITワクチンの安全性および有効性が大きな患者コホートにおいて実施された。それらから、患者と社会への利益があることは確実である。

■ これらの基準は、患者に対し適用されるようになるべきであり、その基準に応じた製品が、最適性と有効性と安全性が証明されていないものよりも優先されるべきである。

■ AITの分子および細胞メカニズムには、初期の肥満細胞および好塩基球の脱感作、T細胞およびB細胞反応の調節、IgEおよびIgG4産生の調節、組織における好酸球・肥満細胞・好塩基球反応阻害が含まれる。

■ 過去数年間、ワクチン戦略、分子メカニズムに関与する新しい分子の証明、AITにおける新しいバイオマーカーの証明などを多くの検討が行われた。

■ プロバイオティクス・ビタミン・生物製剤とAITとの組み合わせは、最近の進歩を際立たせている。

■ IgEからIgG4への免疫応答および樹状細胞、肥満細胞、好塩基球、先天性リンパ系細胞、アレルゲンに対するT細胞応答およびB細胞応答を修正するためのアレルギー疾患、組換えおよび低アレルギー性ワクチンの開発もまた議論される。

 

食物アレルギー免疫療法の項で引用されている表と文献。

論文から引用。最近行われた食物アレルギーに対する免疫療法の表。

 

ピーナッツ経皮的免疫療法(EPIT)は有効である: ランダム化比較試験

就学期前にピーナッツを開始すると、ピーナッツアレルギー発症・進行を予防できる: ランダム化比較試験

 

 

論文から引用。最近行われた食物アレルギーに対する免疫療法の表(つづき1)。

 

ピーナッツ免疫療法に対し、オマリズマブ(商品名ゾレア)の併用は有効か?:ランダム化比較試験

経口免疫療法にプロバイオティクスを併用するメリットはあるか?

ピーナッツ免疫療法は、経口と舌下のどちらが効果的?

加水分解卵による卵経口免疫療法: ランダム化比較試験

 

論文から引用。最近行われた食物アレルギーに対する免疫療法の表(つづき2)。

 

卵経口免疫療法(OIT)を3か月中止すると、どれくらい再燃するか?

オマリズマブ(ゾレア)は乳経口免疫療法の副反応を抑制する

 

 

結局、何がわかった?

 ✅アレルギー免疫療法に関するレビューのうち、最近の食物アレルギー免疫療法の報告のまとめを紹介した。

 ✅経皮免疫療法(EPIT)、就学前からのピーナッツ開始でも発症前であればピーナッツ摂取がピーナッツアレルギー予防になる、ゾレアの併用による免疫療法、プロバイオティクス併用による免疫療法、舌下免疫療法、卵の加水分解、摂取中止後の再燃といった話題が述べられた。

 

 

 

 免疫療法はさらに発展するでしょう。

■ 免疫療法は、経口・舌下・経皮・経リンパ節など、多くの投与ルートが検討されるようになりました。

■ もちろん、それぞれの利点・限界があり、その標準化が進んでいくものと思われます。

【全訳】経口免疫寛容とは何を意味するか?

【全訳】経皮免疫療法(EPIT)の有用性と限界は?

 

レビューを読む楽しみ。

■ ところで、食物アレルギーに対する免疫療法の研究結果は、多数発表されており、当ブログでもずいぶんご紹介してきました。このレビューに言及されていた研究結果のみではないことは当然ですし、優れたレビューはこの他にもたくさんあります。

■ たとえば、フリーで全文読める直近のレビューとしては、Wood先生が発表されていたものがいいなあと思いました(Wood RA. Oral Immunotherapy for Food Allergy. J Investig Allergol Clin Immunol 2017; 27:151-9. )。JACIではありませんがやはり優れたレビューと思います。近いうちにご紹介したいと思っています。

■ 私がレビューを読む理由は、沢山の論文の海を泳いでひとつひとつ目を通さなくても、第一線の先生が、それら様々な研究結果から優れた研究結果を抽出して美味しく料理してくださっているものを味わうことができるからです。特に、私のように英語が苦手なものにとっては、ありがたく思えます。

■ 同じテーマでも、その料理人によって引用される論文は異なる場合ももちろんあります。それはまた、料理人の考えが垣間見えて楽しいものです。JACIは有名な三ツ星レストランのようなもので、レビューも粒ぞろいです。一方で、星がついていない食堂でも素晴らしい料理に巡り会えることがあるように、トップジャーナルでなくとも素晴らしい論文やレビューに行き当たることがあるのも論文を読む楽しみでもありましょう。

■ そして、われわれは、それらの論文やレビューを読むことで患者さんに、還元することができます。

■ 自分自身も、今年は沢山レビューを書きました(日本語ですけど)。レビューを書くときは参考文献に出来るだけ多くの”最近の”論文を引用することにしています。実際は、論文の引用数や文字数に限りがあることが多く、難しいなあと感じることもママあります。優れたレビューとは比較になりませんけれど、もし、私のレビューを読んでくださったかたがいらっしゃれば、そのような苦労も偲んでいただければ幸いです。

■ そして皆様にも、優れたレビューの美味しさに共感いただければ、うれしく思います。

 

 

今日のまとめ!

 ✅優れた免疫療法のレビューの一部をご紹介した。

 

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